はじめに前置きを。
今回、CHAUNCYのお取り扱いがスタートするにあたって、せっかくならブランドのことをもっと深く知ってもらえる機会を作りたいと思い、デザイナー・押尾さんにお話を聞いてみました。


CHAUNCY Interview Vol. 1
「ブランドをやろうと思って始めたわけじゃなかった。」
404: まず最初に聞きたいんやけど、ブランドを始めるまでって、どんな流れだったんですか?
CHAUNCY:ブランドを始めたのはだいぶ後なんですけど、高校生の頃から刺繍やビジューでアクセサリーを作る事に興味を持ちたまたまそれを見たお店の方がお取り扱いまで行って、高校生ながら驚きました。ジュエリーに初めて触れたのは18歳くらいですね。
でも専門分野まで踏み込んだのは専門学校とかじゃなくて、町の彫金教室からのスタートでした。
その頃は仕事しながら趣味で細々続けてる感じで、バイトしたり、旅行したり、結構自由に過ごしてました。
半年くらいふらふらして、「あ、お金ないな」ってなったら働いて、また遊んで(笑)。今思うと、ああいう生活も楽しかったですね。
404:めっちゃいいやん(笑)。じゃあ高校卒業して、そのまま彫金の学校に行ったわけじゃなかったんですね?
CHAUNCY:そうなんです。学校じゃなくて町の教室だったから、仕事しながら通ってました。だからアカデミックに勉強したというよりは、好きで続けてた感じですね。
404:じゃあブランドを仕事にしようって思ったきっかけは?
CHAUNCY:2016年か2017年くらいかな。彫金教室で知り合った子がブランドを立ち上げることになって、「ちょっと手伝ってよ」って声をかけてもらったんです。それがジュエリーを仕事にする最初のきっかけでした。
404:へぇー。
CHAUNCY:そのブランドが結構すぐ大きくなって。私以外にもアシスタントが何人かいて、私は制作をメインに担当してました。4年弱くらいですね。ブランドが大きくなっていくのをすぐ近くで見られたのは、すごく勉強になりました。
404:4年って結構長いよね。そこから独立することになったん?
CHAUNCY:実はブランドをやりたくて辞めたわけじゃないんですよ(笑)。毎年アメリカに住んでるおばあちゃんに会いに行ったり、海外で少し過ごしたりしてたんです。1か月くらい働かない期間が毎年あって。そういう生活を繰り返してたら、「あ、自分って意外とこういう暮らしが好きなんだな」って思うようになって。2020年も海外へ行く予定があったから、一旦仕事を辞めたんです。
404:なるほど。
CHAUNCY:でもそのタイミングでコロナになっちゃって(笑)。旅行も行けなくなったし、仕事も辞めちゃったし、「どうしよう」って。その頃は友達のブランドのOEMを手伝ったりして生活してました。
404:でも技術はずっと変わらずあるもんね。
CHAUNCY:そうですね。ありがたいことに仕事は少しずつあったんですけど、その時に今でもお付き合いのあるショップのオーナーさんが、「ブランドやってみたら?」って声をかけてくれたんです。
404:それがCHAUNCYの始まり?
CHAUNCY:そうです。でも本当に勢いでした(笑)。趣味で作りためてた作品を見返して、「これ型を取ったらブランドになるかも」って思って。最初なんて本当に数型しかなくて。「これだけでブランドって言えるのかな?」って思いながら始めました。
404:意外やな。今見てると最初からちゃんとエディットをしているテイストで完成されてたイメージあった。
CHAUNCY:全然(笑)。本当に手のひらに乗るくらいの数しかなくて、「どうやってブランドとして見せよう…」って思ってました。でも、やってみたら意外となんとかなって。今思えば、本当に行き当たりばったりでした(笑)。
404:でも、それが逆によかったんかもね。最初から全部考えすぎてたら始まってなかったかもしれんし。
CHAUNCY:そうだね。あのタイミングだったから始められたんだと思います。ブランドをやろうと思って仕事を辞めたわけじゃなくて、結果的に時間ができて、「じゃあやってみよう」がCHUNCYのスタートでした。
CHAUNCY Interview Vol. 2
「作らなきゃ、から、作りたいへ。」
404:ちなみにさ、最初にポップアップしてもらった時より、最近めっちゃ石のアイテム増えたよね?なんかブランドの雰囲気も変わった気がする。
CHAUNCY:そうですね。2020年にブランドを始めた当初は、とにかくがむしゃらでした。当時は、つぶつぶしたデザインとか、小さいモチーフとか、そういうものを作るのがすごく楽しくて。好きなことを夢中でやってたんです。でも、それを一通りやり切った頃に、「次は何を作ろう」っていう気持ちが強くなって。新作を作らなきゃいけない、って考え始めたら、ちょっと苦しくなってきたんですよね。
404:あぁ、その感覚なんかわかる。
CHAUNCY:ブランドを始める前は、毎年スペインへ行ってたんです。親が住んでいたこともあって、夏になると1〜2週間くらい何もしない時間を過ごしてました。庭でぼーっとしながらスケッチしたり、散歩したり。実は初期のデザインも、そういう時間から生まれたものが結構あるんです。でもブランドを始めてからは、コロナもあって海外へ行けなくなって。気づいたら、ずっと走り続けてました。
404:だから2024年のスペインが久しぶりやったんや。
CHAUNCY:そうなんです。ブランドを始めてから初めての海外でした。今回は宝石の買い付けも兼ねて行ったんですけど、一番大きかったのは、マドリードの工芸博物館に行けたことでした。ずっと行ってみたかった場所だったんです。
404:へぇ、何がそんなによかったん?
CHAUNCY:古い銀食器とか装飾品がたくさん展示されていて。それを見た瞬間、「これ再現してみたい。」って思ったんです。それまでシルバーって、どこか22金の代わりみたいな感覚が自分の中にあったんですよ。本当は全部22金で作れたら理想だけど、現実的には難しいからシルバーを選んでる、みたいな。でも、その展示を見てからは、「シルバーだからできる表現がある。」って初めて思えました。
404:そこで結構ガラッと変わったんや。
CHAUNCY:そうですね。テクスチャーを試したり、石を合わせてみたり。「こうしたらどうなるんだろう。」って、自分の中で実験することがすごく楽しくなったんです。
404:一点ものもその頃から増えたよね。
CHAUNCY:そうです。それまでは「型を作って量産しないと生活できない。」って思ってたんです。でも、石って全部違うじゃないですか。だったら、その石に合わせて一つずつ作った方が面白いんじゃないかなって。もちろん時間もかかるし、効率は悪いです。でも「もういいや。」って思えたんですよ(笑)。シンデレラフィットする石に、その場で合わせて作る。その方が自分も楽しかったし、お客様の反応もすごく良かったんです。
404:
やっぱり見ててもフェーズ変わったなって思ったもん。
CHAUNCY:周りにもよく言われます(笑)。でも自分でも、肩の力が抜けた感じはありました。「ブランドだからこうしなきゃ。」じゃなくて、「自分が面白いと思うものを作ろう。」って。その方が結果的に、自分も楽しめるし、お客様にも伝わるんだなって思えるようになりました。
404:なんか楽になった?見てると相変わらず忙しそうやけど(笑)。
CHAUNCY:忙しいのは変わらないです(笑)。でも、忙しいことが苦じゃなくなりました。作ること自体が楽しいから。前は「やらなきゃ。」っていう気持ちもあったけど、今は「作りたい。」って思える。その違いはすごく大きいですね。
404:やっぱり旅とか、環境を変えることって大きかった?
CHAUNCY:大きかったと思います。全部がスペインのおかげとは言えないけど、あの時間があったから今のものづくりに繋がってる気がします。自分に余白ができると、新しいものって自然と入ってくるんだなって。だから今でも、旅に出ることはすごく大切にしたいですね。
CHAUNCY Interview Vol. 3
「効率より、自分がちゃんとワクワクできる方を選びたい。」
404:じゃあ最後に、これからCHAUNCYをどんなブランドにしていきたいとか、何かイメージってある?今の時点でもポップアップしたり、お取り扱いも増えたり、いろんな活動をしてるやん。この先はどういうふうに考えてるん?
CHAUNCY:まずは、作ることが苦にならないライフスタイルでいたいですね。どういう時に作ることが苦しくなるんやろうって考えた時に、自分の中では「やらなきゃいけない」が増えた時なんです。本当は、自分が作りたいと思った時に、作りたいものだけを作っていたい。もちろん現実はそんなに簡単じゃないし、お仕事として成り立たせることも大事なんですけど、理想はそこです。
404:めっちゃわかる。
CHAUNCY:だから、もっと身軽でいたいんですよね。例えば旅先で作ったり、その土地で出会った石を使って一点ものを作ったり。場所に縛られずにものづくりができたら、自分はすごく楽しいんじゃないかなって思ってます。そのためにも今はちゃんと仕事を頑張って、そういう生活ができる土台を作ってる途中っていう感じです。
404:私も旅は好きなんやけど、ただ旅行するより仕事がある方が好きなんよ。誰かに会いに行くとか、買い付けに行くとか、ポップアップするとか。仕事を理由に旅して、その途中で新しい景色を見たり、人に会えたりするのが一番しっくりくる。
CHAUNCY:それ、すごくわかります。私も実は旅行そのものが好きっていうより、目的がある旅の方が好きなんです。誰かに会いに行くとか、買い付けをするとか。その方が自然と行動できるし、そこでまた新しいものづくりにも繋がるから。
404:それが一番理想やんな。
CHAUNCY:そうですね。どこかへ行った先で作品が生まれて、その土地で誰かに見てもらえたりしたら最高です。そういう働き方に憧れています。
404:最近の作品って、昔よりもっと手仕事感が増えた印象もあるんやけど、それもその流れ?
CHAUNCY:そうですね。今は鋳造よりも、地金を叩いて作る方法にすごく興味があります。ハンマーと火があれば作れるような、もっとプリミティブなものづくり。効率だけを考えたら全然良くないんですけど(笑)。でも、その方が自分には合ってる気がして。
404:時代とは真逆やんな(笑)。
CHAUNCY:本当に(笑)。でも、前に働いてたブランドでは、型を作って、量産して、在庫を切らさず、お客様のニーズに応える。そういうブランドづくりを間近で見てきたからこそ、それがすごく大変なことも知ってるんです。もちろん、そのやり方は素晴らしいし、実際に成功しているブランドもたくさんあります。でも、自分はそこじゃなかった。自分でブランドをやるなら、もっと自分が楽しいと思えるやり方を選びたいって思ったんです。
404:だからあえて、非効率を選ぶ。
CHAUNCY:そうですね(笑)。どうせ効率よくできないなら、非効率を極めた方がいいかなって。その方が、自分も楽しいし、お客様にも楽しんでもらえる気がしてます。
404:非効率を極めるってかっこいいな。でも404も似てるかも。本当は外注できることもいっぱいあるんやけど、「そこは自分でやりたい」っていう部分がある。梱包とか、香りとか、細かいところまで。効率だけ考えたら違うんやろうけど、それを手放したら404じゃなくなる気がして。
CHAUNCY:そうなんですよね。結局、一人でやってるブランドだから。自分がハッピーじゃないと、ブランド自体が続かない。誰かに雇われてるわけじゃなくて、自分の感性で仕事をしてるからこそ、普段の自分が満たされてることってすごく大事なんです。だから、作ることを「労働」にしないようにしたい。人から見たらすごく働いてるように見えるかもしれないけど、自分の中では遊びの延長みたいな感覚でいたいんです。
404:最後に、これからのCHAUNCYを一言で表すなら?
CHAUNCY:「身軽」かな。実は昔から、寅さんみたいな生き方に憧れてるんです(笑)。小さなケースにジュエリーを詰めて、人に会いに行って、その場で見てもらう。旅をしながら、その土地で出会ったものを作品にして、また次の場所へ行く。そんな自由なものづくりができたらいいなって。ブランドを大きくすることだけが目標じゃなくて、その時々で自分が心から面白いと思えるものを作り続けること。その積み重ねが、CHUNCYらしさになっていくんだと思います。

404:今日はありがとうございました。話を聞いていて感じたのは、CHUNCYは「ジュエリーを作っているブランド」というより、「人生の延長線上でものづくりをしているブランド」なんだなということ。だからこそ作品にも、その時の景色や空気、人との出会いが自然と映し出されているのかもしれません。ジュエリーを手に取る時、その背景まで一緒に感じてもらえたら嬉しいです。ちなみに404先行でとっても可愛いリングを置いていただいております。